NO ART, NO LIFE アートはいつでも君のそばに

心を育てる芸術鑑賞会の企画・制作《ひょうげん教育》のスタッフブログです

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中国人向け「日本語講座」というお仕事

 

こんにちは、武田です。

 

部屋を片付けておりましたら、大変懐かしいものが出てきたもので、ちょっと紹介しようと思います。

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1990年の夏のことです。

私は当時、劇団青年座の劇団員(俳優)として活動していました。

ある日、マネージャーから電話が入りまして、

「『日本語講座』で中国人の役が決まりそうなんだけど、パスポート持ってる?」

と、ちょっと何言ってるか分からないことを言われました。

『日本語講座』ということは、NHK教育(現在のEテレ)かな?

しかし中国人の役?

なぜパスポート??(まあ偶然パスポートは持っていたんですが)

 

よくよく聞いてみると、

NHK教育テレビの海外用(というか中国の学生用)語学番組「日本語講座」で、

私は唯一の中国人役を射止めたらしく、

中国人ツアーコンダクターという役柄で、

中国へ観光に訪れた日本人観光客(という役柄)を相手に、

日本語をぺらぺらと流ちょうにしゃべり、

その映像をテキストの補助(再現ビデオ)として放映し、

それを中国全土の大学生達が見て、日本語を覚える!

という内容であるらしかった。

そのために中国の代表的な観光地(北京・杭州・蘇州・上海)を約1ヶ月かけてロケで廻る、という夢のようなお仕事のお話だったのでありました!!

 

かくして1990年8月、私を含めた「日本語講座」一行は中国へと飛び立ったのであった!

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キャストの面々です。青年座の先輩・平尾さん(左端)以外は初めてご一緒する方ばかり。

 

まず降り立ったのは首都・北京♪

初日の撮影場所が確か、天安門広場だったと思います。

この時、かの天安門事件の翌年。

広場にはそこここに銃弾の跡が残っていたことをうっすらと覚えています。

私が演じる中国人ツアーコンダクターの名前は

「宋 仲良(そう ちゅうりょう)」

「日本語の“仲良し”という字を書いて“ちゅうりょう”と読みます。」

というセリフがあったような・・・

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上の写真は、北京ダッグの食べ方を日本人観光客にレクチャーしている宋くん(私)の絵でございます。

こんな風に、中国の有名な観光地・建築物・文化・食べ物などにふれながら、日常的に使われる日本語を覚えてもらおう、という意図の元、撮影は続きました。

 

北京に約2週間、杭州に渡って5日間、蘇州で4〜5日間、最後は上海で4日間ほどの滞在でしたか・・・

どの都市もよかったなあ・・・

宿泊もさすがNHK様でございまして、北京ではホテル日航のツインルームに悠々1人で2週間滞在。

冷蔵庫の中はビールだらけ!!

近所のスーパーで箱買いしてましたね♬

食事だって最高でした。海の幸・山の幸・野の幸・川の幸・・・なんもかんも上手かった!

例外もありましたな、セミとかサソリとか(汗)

まあ、そんな快適な毎日を過ごしていたもんで、太る太る・・・

1回目と4回目・5回目くらいでは、宋くん別人になっちゃってましたね。

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ロケ先で通りすがりの子どもとパチリ!

 

いよいよ明日は帰国日、という滞在最終日は上海でした。

お世話になった中国人ディレクターにプレゼントをしようとデパートを回り、

彼の小さなお子さん用に機関車のおもちゃを買うところまではよかったのですが・・・動力になる乾電池が付いていないということで、今度は電池を探して店内をウロウロ・・・

無いのですよ、乾電池。

店員さんに「乾電池」と書いて見せても通じない。

絵を描いて+(プラス)とー(マイナス)の記号を書き加えても通じない(泣)

とうとう乾電池無しでお渡しすることになってしまいました。

でも彼は大変喜んでくれて・・・喜ぶ前に大変驚いてくれて、

こちらもほっこりした気分になったものでした。

 

この「日本語講座」、日本での放映は一切なかったため、どんな作品に仕上がったのか確認するすべもなかったのですが、

知り合いになったNHKの音声さんから翌年に年賀状をいただきまして、

「中国の若者たちに“宋 仲良”は大人気で、ファッションや髪形をまねる中国人まで出たらしいですよ」

とのご報告をいただきました。

ああよかった。

回を追うごとに日焼けで黒くなり、ブクブクと太っていく宋くんのことを、親近感を持って見てくれていたようです。

 

そうなんです。

その時(中国滞在中)に撮った写真(共演者やスタッフさんが送ってくれたのですが)が偶然出てきて、あまりに懐かしかったのでちょっとお披露目しつつ、記憶を振り絞ってこのブログを書きました。

 

また行きたいなあ、中国。

30年近く経ったので、きっと全然変わっているんだろうなあ・・・

あの時「日本語講座」を見て勉強した中国の方たち、日本語を役立てているのかなあ。

と、29年後の宋 仲良は静かに想うのでありました。

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撮影中の一コマです。円柱の右側にカメラあります。ロケをするといつでもどこでもスゴイ人だかりになりましたねえ。