NO ART, NO LIFE アートはいつでも君のそばに

心を育てる芸術鑑賞会の企画・制作《ひょうげん教育》のスタッフブログです

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鶉野樹理という女優について

 

こんにちは、武田です。

 

劇団俳優座に所属していた女優で、

劇団東京座で何度も共演させていただき、

我が親友であり劇団東京座の代表でもある木内大介の奥さんで、

ここ数年は御実家の富田林で脚本執筆と舞台演出に精励されていた、

鶉野樹理さん

が亡くなられて2ヶ月あまり経ちました。

 

58歳という若さで、

急性心疾患を患って、

あっという間に逝ってしまいました。

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劇団東京座「多摩蘭坂で乱ランran」より。花柄の棺桶に乗っているのが鶉野樹理さん、右下が私。

感性がぶっ飛んでて、

ダイナミックというかダイナマイトな芝居をする人で、

大酒飲みで、

派手好きで、

魅力的なハスキーボイスの、

ちょっと類を見ないタイプの豪傑でした。

独り芝居のパイオニアとしても有名な、新屋英子さんの長女でもあり、

ストレートプレイもミュージカルも演じるし、

教師役も暴走族役も演る、

役者が服着て歩いてる…まさにそんな人でした。

 

私は劇団東京座の公演で何度も共演しましたが、

彼女ほど演技する上で同調しやすかった俳優は他にいないくらい、

芝居しやすい人でもありました。

 

飲んでる時に、よくこんな話をしていたなあ。

普通の人は、右肩に天使がいて左肩には悪魔がいて、善を説いたり悪が誘惑したりして葛藤するんだけど、

樹理さんは、右肩に悪魔、左肩にも悪魔が乗ってるから、

「今度こんな悪戯をしてやろうぜ」

「いや、そんなんじゃダメだ。もっとメチャクチャにしてやろうぜ」

「だったら、ここまでやっちまった方が気持ちイイだろ、ギャハッ!」

「ダメだダメだ、生ぬるいわ、思いきりグチャグチャにしたれや!」

みたいに、悪巧みが延々と続くんだよね〜(ガハハハハ!!)

 

彼女の名誉のために言っておきますが、

強きをくじき弱きを助ける、そんな懐の深い親分肌の女性でしたよ。

ただ、お世辞とか社交辞令とかが苦手で、

予定調和的な論理や演技が嫌いな人ではありました。

 

2年前、富田林のご自宅のアトリエで彼女の初脚本・初演出の芝居を観る機会がありました。

これもぶっ飛んだ。

舞台は心療内科

登場人物は、アルコール依存症統合失調症・引きこもり・摂食障害といった痛みを抱えた患者ばかり・・・

その痛みの部分を遠慮なしにゴリゴリと引っかきながら、

人間の本音を、

生きることの意味を、

引きずり出してくる・・・

そんな作品でありました。

主役となる女性役はどこからどう見ても、鶉野樹理さんそのもの。

もちろん演じていたのは別の女優さんなのですが、

その破天荒な言動・行動は間違いなく樹理さんのソレでした。

だからビックリしたんです。

自分を客観的にとらえ描いている、樹理さんの作・演出家としての視点が予想以上に鋭くて適確で、

こんなんできる人だったんだ・・・

と、少々ぼう然とした記憶があります。

 

もったいない。

まだまだ、もっともっと、自分ですら気づかない新しい自分に出会えたはずなのに。

 

ただ、今は「おつかれさまでした」と心から伝えたいです。

どうもありがとう。

安らかにお眠りください。

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劇団東京座「宇宙からの訪問者」より。